<亀井 正樹 選>
組合活動の部
【特選】「コロナ禍の現場アンケート『快く話を聞いてくれた!』」
ペットボトルを抱えたのは買い物帰りの作業員でしょうか。彼と向い合って指さしながら対話する女性の視線の強さが真横からでもわかります。周りには横断幕を掲げる仲間やアンケートを持つ仲間たちの姿があり組合をあげて元気に行動する場面もよくわかります。題名を説目的にせず端的にするといいです。
【一席】「コロナ対策は万全です」
コロナ渦で行事を実行するには組織で議論を重ね、対策を練りながら行ったと思います。本来なら楽しいおしゃべりを交えながらの住宅デーも、マスクにシールド着用、ついたての前で黙々と包丁研ぎをしなければならない様子をわかりやすく見せたこの作品も、将来は貴重な記録となることでしょう。
【二席】「福島第一原発入口手前にて線量測定」
数値を書き込む二人の姿には何か沈痛な面持ちを感じます。背後に見える柵が今なお続く放射能汚染地域による立ち入り規制の境界線を示しています。原発事故は世代をこえた出来事です。シニア友の会として福島の実情を調査する様子を冷静に見せました。
【三席】「やさしい目」
子どもの視線にアングルを下げて、講師陣の親方のやさしい目と釘打ちを試みる少女の真剣な目線との対照的な組みあわせが工作教室の様子を象徴しています。背景の緑も屋外イベントであるさわやかなイメージに一役かっています。
【佳作】「本部教宣部の出番です」
【佳作】「分会アイドル」
【佳作】「外国人実習生による」
【佳作】「一緒にやろう」
【佳作】「マルタ切り」
<部門選評>
三部門の中では最も応募数が少ないのですが、組合活動の取り組みやイベントにおいては様々な仲間たちの姿や表情があり、対外的な運動では緊張感あふれる場面やあたたかく涙するドラマなども多くあるはずです。気になる被写体や場面を見つけたら「ただシャッターを押して撮る」だけではなくしばらく様子を見ながら粘ってみましょう。予想外の展開や思いがけない瞬間が待ち構えているかもしれません。仲間たちの活動を写した写真は年月とともに貴重な記録にもなります。
風景の部
【特選】「シャボン玉が咲いた」
春の到来を象徴する桜と俳句歳時記では春の季語であるしゃぼん玉を二つかけあわせた発想に加えて、パステル調の色彩表現でメルヘンチックに独創的な春の光景を作り上げました。桜の木が丘陵の頂に立つ位置の良さとしゃぼん玉が次々と膨らんで来るような効果が開放的な春の広がりを感じさせています。
【一席】「スポットライト」
山岳写真の多くは人が写り込むことが少ないのですが、人物の存在で稜線や山のスケールが把握できます。ここへ登頂して撮影した作者の健脚を感じます。初冬の気まぐれな雲間から刺す光線を、あたかも登山者の健闘を称賛するようにスポットライトというタイトルで作り上げました。
【二席】「メドウサになっちゃった!」
余計な周囲を切り詰めて真下から画面いっぱいの構図で、ケヤキの大木の堂々たる勇姿撮りました。シンプルなトーンの中で大木に絡まる色あせたツルの様子は老木の生きてきた樹齢の年月をも感じます。広がる枝の様子をギリシャ神話のメドゥサにたとえた発想がおもしろいです。
【三席】「東京駅の冬の夜」
近代的な高層ビル群の中でもレトロな建物の東京駅がバランスよく共存できるから不思議です。冷淡調な色彩と空間のなかで西洋風レンガの駅だけが暖色を放ち、冬の夜という題名が温かみを引き立てています。
【佳作】「300年の重み」
【佳作】「弥生のひととき」
【佳作】「美人林」
【佳作】「昭和がある町」
<部門選評>
自然の景色を撮られた作品が多くありましたが珍しい場所を撮影したものやアングルを駆使して意外な見方で撮影を試みたものもあり、これもまた甲乙つけがたいものでした。風景は必ずしも大自然だけでなく、ご近所で見られる町の風景や都会だからこそ見られる特徴的な風景など身近なところにテーマはそろっています。誰もが撮るような、よく見るような写真ではなく、独創的な視点と撮り方であなたが見た風景を切り撮ってみてください。
スナップの部
【一席】「争い」
餌をめぐる生存競争の現実に直面した作品です。シルエットだけに鳥の色や模様などの情報が割愛されて争いそのものが強調されました。躍動的な闘争の眼下で平然と食する他の鳥たちとの関係も面白いです。
【二席】「みんなでお昼寝」
四者四様の姿で気持ちよく昼寝する様子を俯瞰して撮られました。猫ちゃんたちが赤ちゃんを保育するように挟んで添い寝する様子も微笑ましいです。
【三席】「出来た!」
陶芸体験での場面でしょうか。ろくろを使ってお椀が出来上がる様子を背後から見つめる両親の視線は日々成長していく娘の姿に感慨を込めているようです。お嬢さんがやや上目遣いな目線、誰が撮っているのでしょうか。
【佳作】「修学旅行♪」
【佳作】「我が家の干し柿」
【佳作】「水に浮く落ち葉」
【佳作】「散歩中です」
【佳作】「風と落葉」
<部門選評>
スナップ写真だけに日常生活のなかで発見した非日常の出来事、面白い被写体との遭遇、実験的な映像作品など甲乙付けがたい作品がいくつもあり、繰り返し選考に熟慮しました。「写真は感性と表現力」とも言われます。心に響く被写体を発見した時に、それをどう相手に見せるか伝えるかという作者としての考え方も必要です。シャッターチャンスやアングルの工夫、光や影の効果などを使いこなせれば写真の表現領域がひろがります。 題名の付け方も大切な要素です。
課題部門「至福の時」
総評
今回は341点の力作が寄せられました。その約7割以上が「風景の部」と「スナップの部」の応募で占められていました。撮りやすいジャンルなので当然かもしれません。「組合活動の部」は住宅デーや夏の工作教室などのイベントや拡大月間など何らかの「運動」の写真を連想しがちですが、視野を広げればいろいろなテーマが潜んでいる分野だと思います。 写真も音楽や文学などと同じく創作・表現活動のひとつです。普段から意識しながら気になる出来事や風景、面白い発見があればカメラやスマートフォンを向けて撮影してみましょう。「ただ撮った」のではなく撮影アングルの工夫やシャッターチャンスを考え、構図を切り詰めて主題をはっきりさせれば伝えたい内容が明確な作品になっていくはずです。