<田中 千恵子 選>
金賞今日の芥へそまで入りて冬至風呂
12月であれば、職人さんとはいえそれなりの冬着を着ていたことだろう。風呂に入ってみると、何と「へそ」の中にまでゴミが入っていた、と。今日は冬至で風呂はゆず湯である。きれいになったへそに、ゆずの香がさわやか。
銀賞垣根結うまっ更の足袋初仕事
新年を迎えての初仕事は垣根の手入れ。大仕事ではないが、「まっ更の足袋」に、今年も頑張るぞ、の心意気がこもる。
銅賞コロナ禍と天災の地に月光る
コロナ禍と大雨・地震など次々と天災に見舞われると、地球がおかしくなってしまったのでは、と思ってしまう。今年の2月現在、コロナ感染者は全国で10万人を越えた。一日も早い収束を、と願わずにはいられない日々である。
佳作初仕事妻の威勢に押し出され
佳作屋台灯も人もまばらや三の酉
佳作花筵男ばかりのコップ酒
佳作寒風に韋駄天車夫の梅祭り
佳作初参りコロナ撃退願いこめて
一句目、仕事始めのその朝、奥さまの「威勢」のよさに押されぎみ。いいご夫婦の姿だ。二句目、三の酉まである年は火災が多いといわれるが、昨年はコロナで、酉の市も祭りも商売にならなかった。三句目、花見には、男女のにぎやかさとお酒ですよね。来年は女性もご一緒に。四句目、「韋駄天車夫」とは元気がいい。若い車夫のさわやかさ。五句目、「初参り」にも人が密にならない手配があった。神に仏に、願うことは収束のこと一つである。