<亀井 正樹 選>(佳作入選者は順不同)
風景の部
【特選】「蓮の絨毯」
都市の高層ビル群とその裾野に広がる蓮との対照的な風景に興味をそそられます。作者の付けた「絨毯」という題名から文明社会と自然界との対峙ではなく、両者の共存を意識したもので安心感を持って見られる作品です。都会にある意外な景観に着目しました。
【一席】「清津峡渓谷トンネルにて」
すっかり名所となった場所ですので具体的な題名よりイメージでもった題名が似合う風景です。まるで別世界との出入り口を思わせる境界面に並ぶ人たちのシルエットが不思議な光景です。一瞬を写し撮った世界に個々の動作の面白さがあふれている作品です。
【二席】「春の訪れ」
作者の語る春とは季節としての春とともに、コロナ禍により3年余りの制限下であった長い冬からの解放をも思わせる意味が込められている感じがします。新緑の木立を中心に、敷き詰めるように広がる桜と菜の花の美しさ。そこへ集う人々の姿もカップルばかり。まさに春です。
【三席】「スミダの空」
三日月に富士山とスカイツリーと絵になる被写体を欲張りながら、マジックアワーと呼ばれる日没数分間だけに見られる特異な時間を使い見事にひとつの画面に納めました。いつも見る景色と異なる非日常の光景に「墨田」でなく「スミダ」と付けた作者の狙いがしっかりとした作品です。
【佳作】「希望の架け橋」
【佳作】「凍みる時計台」
【佳作】「花吹雪」
【佳作】「古民家の雛飾り」
<部門選評>
自然を題材にした作品が多くありました。「風景」とは必ずしも大自然の織りなす景観だけでなく、身近な場所にも意外な、またすばらしい“小風景“がたくさん存在しています。同じ風景でも時間帯や天候によっても様々に変化するのが風景写真の面白いところです。誰もが撮るような、どこかで見たようなよくある風景写真ではなく、あなた自身の感性と創意に富む撮り方で新たな作品にチャレンジしてみてください。
スナップの部
【特選】「永遠に」
日常の中で展開される様々な情景のなかで最も興味深い、決定的な瞬間が絶えず存在しています。それらの一瞬一瞬を見極めて、撮影された光景こそがすばらしいスナップ写真となります。老夫婦?がともに生きてきた喜びを確かめ合うような場面に作者が遭遇した時、たとえわずかな瞬間であってもこれが永遠にあれと願う心がシャッターを押させたのではないでしょうか。
【一席】「ちょっと休み、わたがし!」
同じ行為でも三人三様の仕草が面白く、真正面から正攻法でしっかりと撮られた写真だけにユーモアある作風になりました。
【二席】「ダンゴ娘」
超広角や魚眼レンズは多くのものが写り込むことに安心して主題が明確にならない落とし穴がありますが、作者はその使い方をしっかりと理解されておられます。周囲の賑わいが聞こえてくるようななかで5人の女性たちが串団子でもって自撮りを楽しむ光景は見る側もがその場所にいると錯覚するほどの臨場感です。
【三席】「ぼくが守るワン」
赤ちゃんのそばで子守をするようなワンちゃんの姿が愛らしいです。周囲の余計な情報を極力切り詰め二人だけの世界にまとめあげたところに作品の主題があらわれました。
【佳作】「大空を飛躍するカモメ」
【佳作】「娘の特等席」
【佳作】「夏の終わり」
【佳作】「桜に負けず!」
【佳作】「親子でつな渡り」
<部門選評>
日常生活の中で見え隠れする思いがけない瞬間を切り撮るのがスナップ写真の醍醐味であるだけに選考でも甲乙付けがたい作品が並び選考には熟慮を重ねました。スナップ写真は理屈より一瞬の感性が先行するものです。心に響く場面と遭遇したときに躊躇することなくまずはシャッターを押してみましょう。
組合活動の部
【特選】「国葬反対国会包囲」
様々な団体が一同に集まり、国会への抗議の訴えを行っている場面は作品を見る者がその場に参加しているほどの臨場感を思わせます。画面の右奥に国会を配置した構図の決め方こそが作者自身の狙いであり、まさに押し寄せる世論に追い詰められた国会を象徴しています。
【一席】「酷暑の集会」
炎天下での集会は厳しいものです。それを面白く具体的に作品化しました。手前の日傘と奥の参加者がタオルをかぶる様子から日差しの強さが感じられます。集会の主役である壇上部分を忘れずに画面に収めている点が酷暑の条件下でも冷静な判断での撮影でした。
【二席】「要求掲げて銀ブラ」
題名にある「銀ブラ」とは遊び歩く代名詞とされたので緊張感を緩めてしまいますが、デモ行進の写真の多くは正面側から撮る場合が多く、それが一般化されていますが作者はややローアングルの視点を試みたことで背景にみえるビル群が経営側、資本側を暗示するような存在となり、その足下でデモする様子が労使関係を表現しているようです。
【三席】「丸太切り」
子どもたちにとっては偉大なる挑戦の場面です。並んでいる子どもたちの鋸をあつかる様子を興味深く眺めています。背後で食事をされている人たちが見えないアングルを探して伝統的な前挽大鋸?の本体がもっと見えると良かったです。
【佳作】「雨降る中」
【佳作】「あきらあきらめない」
【佳作】「青年部も頑張るぞ!」
【佳作】「釘が打てるかなー」
<部門選評>
コロナ禍で集会やイベントなどの組合活動に制限があったせいか三部門の中では最も応募数が少なかったですが、気心知れた仲間たちの姿を楽しそうに撮っている作品が数多くありました。組合活動の集会やイベントにおいては様々な仲間たちの姿や表情があり、企業交渉や裁判闘争などでは緊張感あふれる場面やあたたかく涙するドラマなども多くあるはずです。記録的な視線をこえて仲間たちの真の姿をぜひ撮ってみてください。
課題部門「私にとっての平和」
【特選】「大好き」
【一席】「ゆかいなシーサー」
【二席】「幸せになろうね」
【三席】「告白」
【佳作】「豊作だ~!!」
総評
今回は256点の作品(課題部門を除く)が寄せられ多くは「風景の部」と「スナップの部」の応募で占められていました。旅行やイベントのなかで撮ったものが半数以上でしたが被写体をしっかりと作品化しようと意識して撮られているものも多く見られ、創作意欲がうかがえました。「組合活動の部」は出品数が少なく、記録的な撮り方が多いのですがどの作品も現場の最前線で撮影されているだけに臨場感やその場の空気感が伝わるドキュメンタリー的な作品が見られました。コロナ禍による長い自粛と制限も変わりつつあるようです。停滞していた活動が再開されれば新たな光景が展開されます。ぜひ新しい創作活動を広げてください。