第39回 仲間の作品コンクール 短歌の部

<碓田 のぼる 選>

金賞作業終え埃はらって見上げれば疲れも軽し夕焼雲に二瓶 誠一さん(江戸川支部)

 この作品の最も優れた点は、作者の健康な労働観である。働く自己への卑しみなど微塵もない。それは、働く者にとっては、労働は誇りであるし、それは未来を切りひらいていく根本の力であると信じるが所以であろう。「疲れは軽し」はそうした思いを凝視したこの一首のキーワードである。

銀賞頼むよと己が身体に声掛けて現場作業の一日に始まる大里 輝男さん(多摩・稲城支部)

 この作品の第一句「頼むよ」は、この歌の命のように一首を支えている。それは、現場作業の困難さと作者のやさしさとを読む人に伝えてくる。自分の体に声をかけるとは、作者の見出した新風であろう。

銅賞葬儀にも納骨参加もかなわざり五山の送り火に思いをたくす山田 瞳さん(北支部)

 血につながる人の死にも弔いにも参加できなかったことの嘆きを、五山の送り火が肩代わりしてくれているように燃えているのである。コロナ禍の中で、作者は母を亡くした。その悲傷である。

佳作灼熱の防水作業の現場にて倒れはせぬかと今日も気をもむ小野 かほるさん(西多摩支部)

佳作ウクライナ戦火の映像きり代えてサッカー拍手”なにか”が軋しむ篠田 綾子さん(葛飾支部)

佳作改憲派が護憲派をしのぐ世となりぬ戦に行かざる総理らの下山田 訓さん(北支部)

佳作組合を頼る気持ちを手繰り継ぎ団結の力行かせ運動山本 晃さん(調布支部)

佳作寒の月なお紫に影冴えて猫も欲しがる人のぬくもり鈴木 俊憲さん(港支部)

補欠盗まれた昨日から無いと騒ぎたて置きざりされた哀れ自転車長南 弓子さん(品川支部)

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