第39回 仲間の作品コンクール 俳句の部

<田中 千恵子 選>

金賞汗輝る腰の痛みがハケに消え濱田 和男さん(荒川支部)

 作者は塗装業のひと。朝から腰が重い、痛いと感じながらも仕事をしていると、やがて汗がふき出し、いつの間にか腰の痛みが消えていた。仕事道具のハケが痛みを吸い取ってくれたかのようだ。一心に仕事に打ち込む姿が好もしい。

銀賞刃こぼれ鋏をおとぎて年の暮れ戸田 義生さん(港支部)

 新年をさっぱりとした庭で迎えたいお客さんから声がかかり、引張りだこの毎日だ。商売道具の鋏は刃こぼれし、仕事が終るとその手入れを念入りに。あわただしい年の暮の一幕である。

銅賞墨つぼに生けし一輪寒椿新藤間 洋子さん(台東支部)

 墨壺は直線を引く時に使う大工道具。面白い形をしているので、それを花器として一輪の寒椿を生ける。女性ならではの柔軟な美の感性である。

佳作聖五月青い法被の宮大工田中 明さん(大田支部)

五月の青空とそろいの青い法被を着た宮大工。何か歴史的な仕事にとりかかろうとしているのだろうか。

佳作ふしくれ手濯ぎて絞る春の水神田 春之さん(足立支部)

洗濯機ではおちないよごれを洗っているのかも。春の水はまだ冷たかろう。

佳作甲斐犬の目に凍星がひとつずつ木村 磯子さん(清瀬久留米支部)

甲斐犬は日本土着の和犬。この甲斐犬はまだ幼いのか。眼にひとつずつの凍星が愛らしい。

佳作泥を手に汗を背に負い糧を得る宮本 照代さん(西多摩支部)

 泥にまみれ汗を流して金を得る。現場の労働とはそういうものだ。今も昔も。

佳作値段みて少し小振りの秋刀魚買ふ間邊 美恵子さん(豊島支部)

 ちらっと値段を見て〈え、こんなに高いのか〉とためらうも、小振りの秋刀魚を買う。庶民の実感である。

補欠夕焼け時現場に見上げる渡る鳥山本 晃さん(調布支部)

補欠秋桜が子等を見守る通学路中野 敬子さん(調布支部)

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