第40回 仲間の作品コンクール 短歌の部

<碓田 のぼる 選>

金賞履きもせず捨てられもせぬ地下足袋の 甲に一滴錆止めの赤山田 訓さん(北支部)

銀賞病む吾の食事つくるを苦にもせず コトンコトンと菜を刻む夫篠田 綾子さん(葛飾支部)

銅賞「戦争はしたらあかん」ひしひしと 今思い出す母の言葉岩武 佐代子さん(多摩稲城支部)

佳作それくらい自分でやればと言ったから 夫婦喧嘩が発動中長南 弓子さん(品川支部)

佳作逃げないでビラを手に取り読んでみて あなたと変えたいおかしな世の中大里 輝男さん(多摩稲城支部)

佳作留学に旅立つさくらが文くれぬ 二日に一度は外歩きせよと山田 瞳さん(北支部)

佳作年の瀬の夫の作る蕎麦の味 思い出しつつめんの棒握る柴﨑 志津子さん(葛飾支部)

総評

 東京土建の「第40回仲間の作品コンクール」の短歌の部への応募者は9名で、作品数は38首でした。例年より応募者が少なかったのは、コロナ禍などの影響が大きかったせいと思われます。
 しかし、そうした悪条件の中で、三賞に入った作品は、いずれも日常に基礎をおきながら、短歌への関心をもち、作歌への精進と努力を傾けてきたであろうことが、うかがわれ、三賞の作者と作品に心から「おめでとう」と言いたい思いで、一杯です。
 金賞の山田訓作品で、私が一番注目した表現は結句の「一滴錆止めの赤」で、最後の一字まで、おろそかにせず、集中している気力を感じました。
 銀賞の篠田綾子作品は、病床の作者にかわって夫が食事をととのえている姿をとらえ「コトンコトン」と擬音語を一首の中に見事に定着させています。
 銅賞、佳作は、日常を深く、その切実な願いをよくとらえ、短歌作品として結晶させています。その点は私も注目したところです。
 さて今年のコンクール作品の選考は終わりました。これから来年へのコンクールの時期が始まるわけですが、この機会に投稿をめざす皆さんに二つのことを提案したいと思います。一つは「作品コンクール」を日常化(日常いつも心にとめて努力すること)し、一年を通じて、目標として離さないこと。二つめは、身の回りに短歌の仲間をふやし、三人ぐらいになったら、月一回ぐらいの勉強会を開くことなどです。そうすれば、呼びかけた人の、作歌の力も必ず発展する、と信じます。
 来年の「第41回仲間の作品コンクール」の応募者が増え、すぐれた作品が続出し、この作品コンクールがにぎやかに飾るようにしたいものだと、これは初夢ならぬ、新しい年への私の希望です。

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