第42回 仲間の作品コンクール 短歌の部

<選&選評 小石雅夫>

金賞厚塗の妻の顔より薄塗の壁に伝わるコテのすり音戸田 義生さん(港支部)

銀賞聞かれれば デートと答へる 夫に添ふ 病院に 赤きコート 着てゆく杉本 玲子さん(江東支部)

銅賞開発の裏で歪んだ自然たち怒れる熊と文明の罪吉岡 直将さん(小平東村山支部)

佳作梅を干すその手が母に似てきおり動き、血管曲がりし指も岩武 佐和子さん(多摩・稲城支部)

佳作陽に向いラッパ飲みする赤い髪ペンキの付いた空調服着て大里 輝男さん(多摩・稲城支部)

佳作八十年過ぎて忘れぬ疎開地の虱と飢えと十歳の夏篠田 綾子さん(葛飾支部)

佳作世の中はハラスメントいっぱいで 世間話も気ままならず安立 孝章さん(小平東村山支部)

佳作老いた樹のいのちの触手不定根ただひたすらに地表まさぐる木村 磯子さん(清瀬久留米支部)

総評

 全体にいずれも現場で働いている人らしい率直な感覚、表現で詠まれている作品が多く、気持ちのよい選考であった。 金賞の作品はこのような表現で自分の労働を詠うこと、また銀賞の作品は、夫の看病にゆくことをこんなふうに答えているなど、いわゆる専門の歌詠み・歌人にはできないことであると思い新鮮に、味わい深く読まされた。 銅賞の作品は、人間たちのあくなき開発の広がりをよく知るだけに言える思いでもある。 佳作を採ったどの作品も、近年一般の歌壇紙・誌などに氾濫する言葉・感覚だけのものと違い、生きてきた、生きている人間としての実態・内実をしっかりと捉えられていて捨て難い作品である。 啄木が「食らうべき詩」という評論で言っているように、「実人生を歌う」「珍味、ご馳走でない」歌を読ませてもらった。

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