<田中 千恵子 選>
金賞美人なる庭師みごとな日焼け顔
かつては男の仕事といわれていた現場に、女性も働くのが あたり前の時代となった。真夏の太陽の下で働くその庭師は、はっ とするほどの美人だが「みごとな日焼け顔」。たくましく、さわや かに働く女性の姿を見事に活写した。
銀賞十月を躓き歩く消費税
昨年10月、消費税率が変った。何が10%になり、どれ が8%の据置きなのか。また、ポイントとは何なのか。多くの消費 者がとまどっている。「躓き歩く」のは消費者と同時に消費税その ものでもある。2%上った消費税はどこでどのように使われるのか が、不透明のままである。
銅賞被災地の汗する他人の健気なり
「汗する他人」はボランティアであろう。3・11東日本大 震災の時も、昨年の台風15号・19号の時も、見ず知らずの多く の人々が、わが家の被災の如く駆け付けた。その「健気」さによっ て、美しい日本の風景は必ず甦ることだろう。
佳作泥水の故郷覆ふ雪景色
佳作桜です汚れた花になりました
佳作復興の重機夜通し動く秋
佳作上着脱ぎ戦闘開始鍋奉行
佳作夏の朝赤富士映す山中湖
1句目、ふるさとのこの雪の下には、台風の時の出水で、 農作物が埋まってしまった田畑が。2句目、「桜を見る会」の疑惑 で汚されてしまった桜花。桜に罪はない。罪は安倍首相にある。3 句目、昨年、台風の大風で千葉県のほぼ全域が停電してしまった。 夜通し動く重機は、その時の景だろうか。4句目、さてと、「戦闘 開始」の鍋奉行。全身熱気に満ち上着を脱ぎ捨てる。5句目、朝焼 けに染まった富士。その姿が湖にも映る。二つの「赤富士」は、一 幅の絵のようである。