<関 次男 選>(佳作入選者は順不同)
風景の部
【特選】「無題」
温泉地の“湯畑”のようですが、何とも不気味な写真になっています。湯気とそれを照らす青い光、画面左の活きよいよく流れる水流。そして、中央の不気味な岩などと、人影が見えない画面から“不気味”が湧き出てきます。怪獣が怒っているようでもあり、何とも不気味な写真です。SFの世界を見ているような錯覚を覚える写真です。
【一席】「十五夜飾り」
どこかの民家園のようですが、建物の古さとマッチした“十五夜飾り”の写真になっています。中央奥に人物を写し込んだことで、“飾り”が生きてきました。左の障子はなくても良かったのでは。
【二席】「青い空」
車の屋根に写った空のようですが、露出がアンダーになった分空の青さが強調されました。それが木立などをアクセントとして美しい風景を作ってくれました。
【三席】「朝焼け」
都市近郊の美しい朝焼けと伐採された庭木。よく、都市近郊で見られる、美しく、切ない風景です。アンダー気味の露出が、それらを強調しています。
【佳作】「だれもいないベンチ」
【佳作】「私達もうあきらめます」
【佳作】「東京の空(うろこ雲)」
【佳作】「通潤橋」
【佳作】「よみがえる古木の美」
<部門選評>
風景写真を撮る場合は特にそうですけど、相手は動きませんから上下左右と自分が動くことです。少し動いただけでも写真が変わります。そうしてたくさん撮って後で選べばいいんです。もっともっとという欲張り心が大切です。それと、待つことも大切です。雲など対象が動く場合は、動きを予想して待つことです。そうすることで、自分の作品にすることができます。今回は、多くの作品にそのような狙いをはっきりさせるというなものを感じました。
それと、景色を漫然と眺めないことです。何を見せたいのか、何処を見せたいのかをはっきりさせることです。フレーミングやアングルを変えてここだというところでシャッターを押すことが大切です。
スナップの部
【特選】「マスクウォーターメロン」
家庭菜園でしょうか、まさにタイムリーな写真の一つだと思います。スイカのその後(行く末)について考えさせられてしまいます。
緑の中のマスクの白が“コロナ”を連想させるとともに、スイカを目立つように効果的に効いています。清潔感のある写真です。ズバリと写したところがいいですね。【一席】「自然のレース編み」
よく見る光景ですが背景を青い空にしたところがアイデアですね。美しい写真です。
空に向けて写したために、植物の露出が少々アンダー気味(暗く)になりましたが、それが写真的には、かえって“写真の強さ”という“効果”としてはたらえていると思います。」【二席】「カメラウーマン」
撮影者(女性)を対象にしたところがユニークですね。写される御夫婦(か.?)と対照的に活動的な撮影者の取り合わせも面白いです。見上げるように写し込んだ桜の花、青い空。画面に清潔感をもたらしています。スッキリとした気持のいい写真です。
【三席】「My Dream」
お客のいないお店(カウンター)、コロナ禍の記録でしょうか。貴重な写真です。カウンターの中に店主(オーナー)が居ればさらに説得力が出たのではないでしょうか。
【佳作】「エサの取り方の練習」
【佳作】「百合」
【佳作】「彩り」
【佳作】「光のマテリアル」
【佳作】「光のイタズラ」
<部門選評>
よく“スナップこそが写真の醍醐味だ”といわれます。私たちは日々思いもよらないことに出会います。そんな時少なからず心が動かされるものです。その心の動き―心を動かしたもの―を写真に写す。これがスナップ写真だといえます。“アッ!”と思ったらすかさずシャッターを切る。このことが大切です。また、“写真は理屈ではなく、感じることだ”とも言われます。良い写真にはそんな撮り手の心の動きが見る者に伝わってくる手がかりが数多く写し込まれています。
組合活動の部
【特選】「山門の上棟」
空を見上げるようなアングルで、建物や職人さんを青い空に写し込んだことで画面がスッキリとなりました。また、山門の真新しさも強調されました。狙いの明確な、清潔感のある写真になっています。職人さんの白いフェルメットも青い空との対比で効果を発揮しています。
【一席】「雨でも楽し!」
雨中の集会参加の一場面でしょうか、本当に楽しそうです。急ごしらいのゴミ袋でのカッパもそうですが、マスクが面白いですね。旗の一部分を写し込んだことで“何かの集会”参加ということが想像できます。背景の木立が狙いの対象を強調してくれました。
【二席】「太鼓と伊藤さんの腕」
ストロボを発光させ、右の人をカットしたことで、狙い通り(題名通り)の写真になったと思います。強い写真です。ストロボ光の効果でバックが暗くなり、伊藤さんや太鼓が強調されて、写真的効果を強くさせた写真になっています。
【三席】「めでたい!」
青空に投げ上げられたお菓子や舞台、観客の手などが良いシャッターチャンスで写されたことで、“喚声”が聞こえてくるような写真です。
【佳作】「支部を明るく照らします」
【佳作】「新型コロナにまけないぶそう」
【佳作】「部会の前に」
【佳作】「息もピッタリ」
【佳作】「無言のシュプレヒコール」
<部門選評>
今回は“コロナ”の関係でか、応募作品数が減少したということですが、そんな中でもいろいろと工夫をされた多くの作品を見せていただきました。
「佳作」の「支部を明るく照らします」「部会の前に」などは、そんな中の一つではないでしょうか。直接「支部活動」と結び付かなくても何か“ホット”する写真です。いつものことですが、この部門をそんなふうに考えて応募されると作品の数も増えるのではないでしょうか。
課題部門「家族の笑顔」
【特選】「家族の笑顔」
【一席】「三姉妹」
【二席】「ママだぁ~い好き」
【三席】「アイアムナンバーワン」
【佳作】「やったぜ父ちゃん」
総評
写真仲間の間で、よく、“写真を読み解く”という言葉を使います。それは、写真に何が写っているのか、写真が何を“喋っているのか”などを話し合うことですが、多くの写真は何かをしゃべっています。それは、撮影者が喋らせているわけです。何を写し込むかによってしゃべる言葉は変わってきます。撮影者が喋らせたいと思うことが前提になりますが‥‥。別の言葉でいえば、主張とかテーマということになりますが‥‥。
写真がデジタル化して約10年。今や、誰もがきれいで失敗のない写真を撮れるようになりました。写真の良し悪しは、写真を見た人にどれだけ感動を与えられるかどうかが問われる時代になってきています。
よく、私はアマチュアだから、などという人がいますが、今や、プロもアマチュアもありません。同じ人間同士、写真家同士です。どれだけ写真に喋らせることができるかです。
そのためには、多くの人に見せて反応を見ることも大切です。そういうことを繰り返していくことで、だんだん写真が多弁に、モノを言うようになってゆくでしょう。