関 次男 選(佳作入選者は順不同)

◆組合活動の部

特選 「ヒッパレ!ヒッパレ!」 吉川 恭司さん(練馬支部)
1席「丸太切り」 飛田 幸男さん(東村山支部)
2席「拡大、出足は好調」 浅山 了二さん(江戸川支部)
3席「小鳥のお家」 野村 明雄さん(日野支部)
佳作「赤白大玉送り(赤かて白かて)」 渡邉 弘さん(練馬支部)
佳作「プランタン作る子たち」 石川 進さん(杉並支部)
佳作「命」 手捲文江さん(多摩西部支部)
佳作「銅板打ち」 原島 正義さん(西多摩支部)

◆風景の部

特選「燃えさかる炎」 久保 猛磯さん(西多摩支部)
1席「黄金に輝く冬の風情」 畠 英章さん(墨田支部)
2席「断崖の勇者(鳶)」 斎木 康伸さん(練馬支部)
3席「涼呼ぶ(奥入瀬)」 両角 文雄さん(北支部)
佳作「石上に咲いた花」 駒形 光男さん(墨田支部)
佳作「郷愁」 清水健さん(町田支部)
佳作「生きる」 小野 定康さん(清瀬久留米支部)
佳作「椛」 玉置 裕人さん(八王子支部)
佳作「春の案山子」 渡邉 睦男さん(江戸川支部)

◆スナップの部

特選「窓辺HOT一息」 芳井 武さん(葛飾支部)
1席「公園の名人戦」 小川 延男さん(北支部)
2席「やさしい目(馬の目はきれい)」 菊池 喜枝子さん(清瀬久留米支部)
3席「こんにちは(カワセミと赤トンボ)」 長南 健一さん(墨田支部)
佳作「身だしなみ」 松橋 洋子さん(北支部)
佳作「輝く瞳」 杉浦 由美子さん(三鷹支部)
佳作「お花見デビュー」井 慶子さん(西多摩支部)
佳作雨のヨル市」荒井 忠吉さん(西多摩支部)
佳作「歓喜」佐渡 荘さん(武蔵野支部)
*応募は、29支部89人・237作品です。

選評 関 次男

【組合活動の部】

特選〔ヒッパレ!ヒッパレ!〕吉川恭司(練馬支部)

 思い切り対象に迫っているところがいいですね。男性の頑張っている表情と女性人のテレた感じの対比も面白いです。歓声やその場の熱意が伝わってきます。低い位置から見上げるように写したことで力強さがでました。背景の万国旗もその場の雰囲気を盛り上げてくれています。

一席〔丸太切り〕飛田幸男(東村山支部)

 “私にもできるわよ”とでも言いたそうなお年寄りと“がんばって”と声援をおくるお仲間、心配そうに見つめる左下の女の子、それらの取り合わせがいいですね。鋸を持つ手元のブレが効果的です。上方の若者の顔がなければもっと明確な写真になったことでしょう。
 

二席〔拡大、出足は好調〕浅山了二(江戸川支部)

 シャターチャンスがいいです。雄叫びを上げる主人公と取り巻きの笑顔。横断幕をかかげる仕草もその場の雰囲気を想像させてくれます。この写真も見上げるようなアングルで写したことで力強い写真になりました。

三席〔小鳥のお家〕野村明雄(日野支部)

 あたかも職人さんに成り切っているような、それぞれの仕草が面白いです。良いタイミングでシャッタ―が切れています。 ただ、もう少しカメラを右に振ればもっと人物が強調され、二人の世界が見えるようになったでしょう。
「選評」
 毎日感じることですが、この部門は“活動”という文家が頭から離れないためか難しいものになっているようです。もっと気楽に“組合員さんの日頃の表情”というように解釈して、その中での喜怒哀楽をカメラに収める。そうすることで、結果的に組合の姿が見えてくるのではないでしょうか。拡大や集会・行事だけではなく、良い仕事をすることも結果として組合活動につながるんだ。そんな考えで写真を撮ったらどうでしょうか。
 今回、上位になった写真それぞれが行事の中で撮った写真であったとしても、行事の紹介に止まらずに、そこに参加した人それぞれの気分や感情に関心を寄せて、そのことが他人に伝わるようなタイミングやアングルで写されています。そんな写真が見る人を引き付けるのだと思います。

【風景の部】

特選〔燃えさかる炎〕久保猛磯(西多摩支部)

 どんどん焼きでしょうか、迫力ある写真です。炎の魔力のようなものを感じます。観客などを除いて炎をズバリと撮ったことで力ある写真になりました。カラ―ならではの写真です。手前の影の部分や水面への写り込みの処理をもっと巧くすると、お飾りやダルマなどがもっと写真的効果を発揮したのではないでしょうか。

一席〔黄金に輝く冬の風情〕畠英章(墨田支部)

 計算された巧い写真です。青い空と黄金のイチョウ、それらを映えさせるためのシルエットの〇〇。ハイキ―気味に写されたイチョウが、何か一束の黄金の花穂のように見えてくるような不思議な面白さがあります。何より黄色の色合いが美しいです。

二席〔断崖の勇者(鳶)〕斎木康伸(練馬支部)

 光線の良さとタイミングの良さで、鳶の姿態、特に鋭い目線が効いています。色合いもいいです。ただ、右方の草木がそれらの良さを邪魔してしまっているようです。その辺の処理ができていたらもっと力強い写真になったと思います。

三席〔涼呼ぶ(奥入瀬)〕両角文雄(北支部)

 長時間露光で水の流れに力を持たせ、静と動の世界を見せてくれています。肉眼では見られない風景です。左方の静かな流れを排して、もっと動きを強調した写真にしてみるという方法もあったのではないでしょうか。
「選評」
 風景写真は取っ付きやすいけど難しい。人物や動物などは被写体がいろいろ演技してくれますから、ここぞというところでシャッタ―を切ることが出来ます。しかし、風景の場合は何をどういうふうに撮るかをカメラマンが決めなければなりません。印象深く、心が動かされたものを独自の見方で写すことが求められます。そうしないと見る人を引き付けることは、なかなかむずかしいものです。
 一つの方法としては、自分が見たこともない風景、例えば深夜の街中や雨の日など、同じ場所でもまったく違ったものが見えてハッとさせられることがあります。いずれにしても漫然と写すのではなく、先ず、本人が心動かされることが大切です。そのことがひとに伝わるためにはどう写したらよいか、いろいろ試行してみることが重要です。

【スナップの部】

特選〔窓辺HOT一息〕芳井武(葛飾支部)

 大変美しい写真です。モノクロを思わせるような色調の中に、必要最小限の効果的な赤を写し込むなど、心憎い写真です。
 黒い窓枠も非常に効果的です。雪の外景と暖のきいた屋内、白の世界と黒の世界、これらの絶妙なバランスが心地よい世界をかもし出しています。メルヘンの世界に出会ったようです。

一席〔公園の名人戦〕小川延男(北支部)

 肩肘張らない良い写真です。何よりも写真にしようという〇〇を感じさせないところがいいです。フッと目に止まったものを素直に写真にした。背景の木々や犬、人物もいい具合に入っています。
 テ―ブル上のタバコやライタ―も効果的です。

二席〔やさしい目(馬の目はきれい)〕菊池喜枝子(清瀬久留米支部)

 撮りたいものをズバリと撮ったところがいいです。タイミングもいいですね。雑草を仲立ちにして、ちょっとしたお話しが出来そうな、ほほえましい写真です。

三席〔こんにちは(カワセミと赤トンボ)〕長南健一(墨田支部)

 何か童話の世界を見ているような写真です。技術的には難点もありますが、それを超えた世界を見せてくれます。
このような写真に出会うと単に技術の巧さだけではないという思いが強くなります。
「選評」
 写真一般にいえることでしょうが、心の動き―気分や感情を写真という形に置きかえる作業、これが写真を撮るということです。特にスナップは、そのことが特徴的に出る部門だと思います。ですから、これはと思ったものを反射的に撮る、撮ってから考える。こんなことでシャッタ―を切ってみるといいと思います。
 とにかくシャッタ―チャンスを大切にすることです。常日頃からそんな感じで写真を撮っていけば、生き生きとした写真をものにすることができるようになるでしょう。
 今回もそんな写真が上位になりました。
『総評』
 今回は昨年を上回る応募数ということで、いろいろな作品を楽しく見せていただきました。
ご時世を反映してか、その多くがデジタルでの写真だったようです。写真界全体がデジタル化されつつある現在では当然のことではありますが、いくつか気をつけたいことがあります。
 最近、写真仲間の間で交される会話に技術的なことが多くなっているように思われることです。写真も表現手段の一つですから、その表現技術を軽視することはできません。ただ、何を撮りたいのかという表現の原点だけはしっかりとおさえておきたいものです。
 又、デジタルになってから、写真を簡単に消してしまってはいないでしょうか。大切な記録ですから、後々後悔しないようにしたいものです。
 写真の特長は、やはり記録性にあると思います。それも、対象の記録ということもありますが、その時々の自分の心のありようの記録なのではないでしょうか。
 そんなことを考えながらシャッタ―を切っていくと、写真が別の重さを持ってくると重います。