碓田 のぼる 選(佳作入選者は順不同)
*応募は、13支部、74首
選評 碓田 のぼる
■金賞
穏やかな冬の陽を溜めわが家のソーラーパネルが静かに呼吸す
杉本 玲子 (江東支部)
【 評 】
ソーラーパネルを詠って、結句が巧みである。いかにも冬のおだやかな日と、作者の家族の日常をも浮かばせてくる。
■銀賞
店閉じる材木商の朽ち倉庫ヒノキの木っ端隅に香りて
篠田 綾子 (葛飾支部)
【 評 】
作者の感性がこまやかにゆきとどいている。廃業を思いやる心のゆれを、小さなヒノキの木片の香りとして表現している。
■銅賞
仕事なく手の胼胝消えてなまる腕大工してると云えぬ昨今
島崎 強 (西東京支部)
【 評 】
仕事もない状況が決して一時的なものではないことをリアルに歌っている。この作品には、現実を告発する声がひそむ。
佳作
下手くそなわれの署名も声あげよ憲法九条守りぬくまで
山田 訓 (北支部)
【評】たとえ署名の文字はつたなくとも、憲法九条を守る草の根からの一人の意志を伝えたいという思いが伝わってくる
窓の辺に花一輪挿し置きて疲れて帰る夫を待ちたり
曽根 葉予 (足立支部)
【評】夫の労働にたいする妻のいたわりの思いが、さり気なく花一輪をかざることに、しみじみとして表現されている。
請願書かく間はしばし静謐の並んだ肩が僅かに揺れて
小田部 清助 (杉並支部))
【評】くらしや平和の切実な願いにかかわる請願書であろう。そのわずかな時の間の緊張した様子を「僅かに揺れて」で表現。
老化して痛める足を撫でながら老夫の介護も至福と思えば
半澤 ハツ子 (目黒支部)
【評】老老介護と云う辛い状況の中ではあるが、作者は、夫を介護することを「至福」としている所に、人生の深さがある。
久びさに小道具握りしむ指の老なれやゆがむ節ふしいたむ
日塔 善英 (荒川支部)
【評】久しぶりの仕事で道具を握った時の感慨である。「老いなれや」には、過去の労働も想像させる作者の思いがこもる。