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第31回 仲間の作品コンクール 結果発表!
短歌の部
<碓田 のぼる 選>
金賞
研ぎ立てて並ぶ包丁に照り返す目眩(めくる)めくほど日盛りの射す 日塔 善英(荒川支部)
選評
土建のイベントの包丁研ぎの一コマを歌っている。この包丁研ぎの緊張と出来栄えが、一首全体に張りつめている。言葉が一首の中で孤立せず、全体としてかかわり合って展開されている所がよい。労働現場がリアルに表現されている。
銀賞
どこよりか涼しき風の流れきて足場の上に胸はだけ受く 山田 訓(北支部)
選評
労働現場の歌である。しかし、労働をコトガラとして歌っているのではなく、働く場の中の一瞬、そこに作者が表現の「足場」をかためている。一首の中に、働くものの、すがすがしさが流れている。
銅賞
早朝の足場パイプは光りおり家の形が日々立ち上がる 篠田 綾子(葛飾支部)
選評
早朝の現場の一点景をとらえている。作者の目に「光って」いるのは、足場パイプだけではなく、日々立ち上ってゆく「家の形」であろう。作者はその家の姿にいとしみを感じている。
佳作
墨つぼの回手(かえで)回せば寄って来る糸車目掛けて軽子が躙(にじ)む 木下 文夫(八王子支部)
味噌樽の中に十年九年母(ぼ)の香り漂ふ夕餉(ゆうげ)の膳に 渡辺 睦男(江戸川支部)
まだ温き夫の骨壺抱き帰る共につくりし小さな家に 小野 かほる(西多摩支部)
暑き日も凍てつく日にも足場にて壁修理する夫の身を案ず 岩武 佐代子(多摩支部)
初孫と共に育てと裏庭へみかんの苗木に添木して植えたり 五味 みゆき(府中国支部)
総評
選のあとに 戦後70年の記念の年の「第31回仲間の作品コンクール」の短歌の部に応募された作品数は、のべで、19人63首でした。応募人数は多くはありませんでしたが作品数は多かったと思います。
入選作品、佳作の作品を含め、全体的に働く現場を詠んだ作品が多く、また、生活や家族を歌った作品が目立ちました。佳作の作品は、生活を支える道具を見つめて作っており、きわめてユニークでした。渡辺作品も五味作品も、暖かな家庭生活を想像させるし、小野作品と、岩武作品はいずれも夫への愛情をこめたものでした。
短歌の対象となるものも、またその表現も限りのないものです。短歌はその中から、心にしっかりと響いたものを選び出し、自分のもてる言葉の力で、その感動を表現しようとするものです。
投稿者の輪がさらに拡がり、次回コンクールには、この歴史的とも云える時代の歌が、さまざまの角度から、歌いあげられてゆくことを心から期待するものです。