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第32回 仲間の作品コンクール 結果発表!
短歌の部
<碓田 のぼる 選>
金賞
家造る職を喜ぶ夫といて 我も楽しむ財などなくも 篠田 綾子(葛飾支部)
選評
家を造ることを天職として働いていることを、この上ない喜びとしている夫。また妻はその夫の生きざまに、心から共感している。心暖まる作品である。労働が喜びと。まこと、このような事かと思う。
銀賞
バスの席膝に荷を抱く少年は 部活か疲れにうなだれ揺れる 日塔 善英(荒川支部)
選評
日常目にする光景である。この一首をよんでいると、その光景が実にありありとしてくる。表現が強いイメージを作っているからである。作者は、じっとこの少年を見つめている。その目はあたたかい。
銅賞
木もれ日の静まりかえる境内の 土のしめりにえごの花ちる 五味 みゆき(府中国立支部)
選評
写生の歌である。しかし、ただ見たことを述べたという作とは、異なっている。静かな雰囲気の中で、えごの花の散るのをとらえているのであるが、「土のしめり」と歌った感性はすぐれている。
佳作
ケーブルを引く手視る目に年が寄り 電工稼業あと幾春か 山本 邦彦(港支部)
アンテナで何を語るかカラス二羽 世相批判かラブロマンスか 岩武 佐代子(多摩・稲城支部)
「刃を持たずテロを憎まず」と被害者の 言葉は世界の空を駆けゆく 小野 かほる(西多摩支部)
群衆の頭のうえを越えてくる 大江健三郎の声に背伸びす 山田 訓(北支部)
身障者片麻痺抱え傘寿なり 爪はよく伸び爪切る我は 諸星 武司(多摩・稲城支部)
選評
山本作品の結句、岩佐作品のユーモア性、そして小野作品の視野の広さなど、いずれも表現の面白さをもったものである。しかし、総体的に、歌うべき対象と自分とのつけ合わせが浅いように思う。もう一歩深めると、一段と表現世界が発展することであろう。