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第33回 仲間の作品コンクール 結果発表!
川柳の部
<高鶴 礼子 選>
金賞
やれ今日も無事に生きたと風呂の中 中村 久枝さん(世田谷支部)
選評
湯船の中で手足を伸ばした時の、あの、じわーっと湧き起こる、得も言われぬ心地よさ――。それは、まさに、ああ、今日も一日、無事に生き延びたなあ、という実感があふれくる瞬間でもあります。それを、気張らず、気取らず、さりげない吐露に託して、実在感たっぷりに書き切ったところが手柄でした。描かれている《そのひと》の体温すら感じさせる、拵え事でない表出に惹かれます。
銀賞
おもてなし右か左かもめている 濱田 晴恵さん(荒川支部)
選評
作者が材を採られたのは、おそらくは数年後に迫った東京オリンピックに絡む種々の案件からではないかと思いますが、この句は、それのみにとどまらず、施主の側にいる人々の間に起こる、もめごとすべての様相として読めるところが秀逸です。加えて、「右」「左」という語を使うことにより、そのもめごとの背後には、ひょっとしたら、政治的な思惑までもが潜んでいるのかもしれない、ということをも匂わせる語りとなっているところにもご注目を。「世界」の中に生きる者としての、《まなざしの確かさ》を感じさせる作品です。
銅賞
昔から自分ファーストしています 金谷 修さん(江東支部)
選評
おお、そうですとも、そうでなくっちゃ、と、思わず、賛同のエールを送りたくなってしまう吐露です。自分を大事にしてこその人生。そうであるからこそ、すべてのオトシマエは自分でつける、という潔い姿勢が持てる人間になれるというものなのですよね。この句は、何と言っても、どこぞの知事さんの「〇〇ファースト」という決めゼリフを、さりげなく持ってきたところがニクイほど(笑)。楽しさの中にある全き向日性が魅力です。
佳作
背(せな)はだけ古稀のヤンキー根性焼き 黒田 順さん(小平東村山支部)
金婚に貧困も付く高齢期 石島 弘さん(小平東村山支部)
L・E・D使い切るまで生きれるか 岩波 邦治さん(狛江支部)
腰痛も仲間と思う昨日今日 中田 実さん(文京 支部)
幸せは遠くじゃなくてそばに在る 下田 昇(足立支部)
総評
川柳を書く、ということは、標語やスローガンを書く、ということとは違います。
どんなに切実な問題提起であったとしても、報道の後追いのような、句の中に《にんげん》のいない、内容伝達のためだけのコトバに堕ちてしまいます。
どうか、《私》の目で見て、《私》の耳で聴き、《私》の頭で考え、《私》の心で掴み切ったものだけを、《私》の言葉で、書こう、となさってみてください。自分自身の言葉を探すための格闘をせず、どこかで読んだり聞いたりした言葉を安易に使ってしまっているのではないだろうかと、立ち止まって、お心を探ってみてください。すべてはそこから始まります。