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第34回 仲間の作品コンクール 結果発表!

短歌の部

<碓田 のぼる 選>

銅賞 銀賞 金賞
防水の塗料の汚れ掌につけて家族養う息子の腕太し 外は雨かけやの音が聞こえると仕事の夢か病む貴方と居て おぼつかぬ歩みの我に道ゆづる残材山積む産廃車あり

 
おふくろの味が深み入る弁当箱今も引き次ぎ愛妻弁当 買物のカート引きゆく老妻の生きる強さ背中に滲む 多摩川に声響かせて凧上げる孫らの姿子犬のごとし 「山田さん指にペンキがついちゃった」甘えを帯びる施主君の声

金賞

おぼつかぬ歩みの我に道ゆづる残材山積む産廃車あり 篠田 綾子さん(葛飾支部)

選評

 一首の言葉は、事実をありのまま描写しながら、深い人生的な内容をうかがわせる。上句は作者の厳しい自己凝視である。下句の「残材」や「産廃車」が生み出す、あらあらしさとは反対に「道ゆづる」人の人間的なやさしさを生み出している所が見事である。

銀賞

外は雨かけやの音が聞こえると仕事の夢か病む貴方(きみ)と居て 五味 みゆきさん(府中国立支部)

選評

 抒情味をたたえた作品である。「外は雨」という投げ出したような言い方が、破綻せずに一首全体にひびいている点は巧みと云えよう。四句の「仕事の夢か」と想像する所、夫へのやさしさがこもる。「か」がその思いを深くしていると云えよう。

銅賞

防水の塗料の汚れ()につけて家族養う息子()の腕太し 小野 かほるさん(西多摩日の出支部)

選評

 この作品の最大のよみ所は、結句の「息子の腕太し」であろう。これは巧みである。家族を養う懸命さが、この具体的な表現によって実にありありとするからである。短歌は具象的(『万葉集』的に云えば、モノに託して思いを述べる)に歌ってこそ力がある。

佳作

「山田さん指にペンキがついちゃった」甘えを帯びる施主君の声 山田 訓さん(北支部)

選評

 作品世界にあらわれている人間関係はほほえましく、ぬくみを感ずる。社会性が加われば、この作品はもっと深くなろう。

多摩川に声響かせて凧上げる孫らの姿子犬のごとし 岩武 佐代子さん(多摩・稲城支部)

選評

 迷いなく一直線に歌っているのが良い。結句「子犬のごとし」もよくおさまっているのが、上の句に、結句とかかわる表現がほしい所。

買物のカート引きゆく老妻の生きる強さ背中に滲む 諸星 武司さん(多摩・稲城支部)

選評

 老妻へのいたわりもこもる歌であるが、「生きる強さ」を他者にも感じられるようもう一歩、具体的に表現できたらと思う。その不足が惜しまれる。

おふくろの味が深み入る弁当箱今も引き次ぎ愛妻弁当 道端 利孝さん(葛飾支部)

選評

 弁当箱物語とも云える歌である。母から妻への時代の推移が、もう一歩この「弁当箱」を通じて表現できたら、よい歌となったと思う。

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